【地歴】研究会レポート「科目編成と入試から考える」

高校歴史科目の今後のありかた

【地歴】研究会レポート「科目編成と入試から考える」

研究会の概要
ラーンズ 研究会レポート Vol.012 地歴公民@大阪
ラーンズ マーケティング・営業部です。
2017年10月7日に大阪で 「高校歴史授業の今後のあり方 -科目編成と入試から考える‐ 」と題する研究会を開催しました。教育改革,入試改革の検討が進むなかで,今後の歴史教育がどうなっていくのかをテーマにお話いただきました。

研究会 テーマ
新科目「歴史総合」の見通し
これからの教科書のすがた



先生のプロフィール
先生のプロフィール

原田 智仁先生
1952年,愛知県に生まれる。
広島大学教育学部卒業,同大学院教育学研究科修了(博士)。愛知県の公立高校で教諭を14年務めたのち,兵庫教育大学学校教育学部講師,同学部助教授などを経て,2000年より兵庫教育大学学校教育研究科教授。専門は社会科教育学。現在の研究対象は,子どもの思考力や判断力を培う歴史の指導と評価。1997年〜2008年の間,文部(文部科学)省の世界史担当教科調査官を併任し,1999年版の指導要領の改訂に携わる。今回の教育課程改訂にも中教審の委員として参加。社会系教科教育学会会長,全国社会科教育学会理事(副会長)。
主著『世界史教育内容開発研究‐理論批判学習‐』(風間書房,2000年)

新科目「歴史総合」の見通し

【地歴】研究会レポート「科目編成と入試から考える」

高等学校で「歴史総合」と「地理総合」という必修科目ができますが,これは世界史の敗北であると認めなければならないと私は考えています。何に負けたのかというと,日本史と地理に負けたのです。世界史がなぜうまくいかなかったのか,なぜ生徒がセンター試験で地理や日本史に流れていってしまうのか,そこをきちんと踏まえて反省する必要があるでしょう。

「歴史総合」では,近代化・大衆化・グローバル化という変化に着目することになっています。一方で,先生お一人お一人が,その着眼点は違うと,自分は近現代をとらえる枠組みとして,あるいは視点として,こういうものがあるのだというのを自分でつくっていくことも必要です。先生が自らカリキュラムをつくり出し,運営し,改善し,強化していく,そういったカリキュラムマネジメントが求められると思います。

「歴史総合」の「総合」というのは,日本史・世界史の総合だと思っている人が多いと思います。そうでないとは言い切れませんが,私は歴史を総合する主体は学習者である生徒自身だと考えています。授業を通して,これが近現代だな,ということを生徒自らが総合できるように素材や考え方を提起できるかどうか,これが大きな課題になると思います。ですから,新しい「歴史総合」では,単なる近代化・大衆化・グローバル化ではなく,「近代化と私たち」「大衆化と私たち」「グローバル化と私たち」がテーマとされています。私たちというのは,まさに公共者のことです。この授業の1時間で,あるいはこの単元で,どのように近代の総合ができるのか,あるいは大衆社会の総合ができるのかを考えることが必要だと思うのです。今までのように,時系列を追って,教科書を丁寧に教えていくやり方では,生徒には公共者としての視点は生まれません。先生なりの「近現代とはこういうものだよ」と提示して,生徒の中の「なるほど」という納得,もしくは「そんなはずないじゃないか」という反発により,共振・共鳴が生まれれば素晴らしいと思います。

「歴史総合」は市民の視点が大事になると考えています。市民として歴史から何を学ぶのかということを中心にしてはどうでしょうか。歴史のある事例から,これからの少子高齢化はどうなっていくのだろう,農村はどうなっていくのだろう,年金はどうなっていくのだろう,社会保障はどうなるのだろうと考えることもできるのです。


歴史の探究科目の見通し

歴史の探究科目はどうなるかというと,まず「日本史探究」は,日本の諸地域,いろんな多層性,多様性が注目されるようになるでしょう。いろんな地域の複合体としての日本史ということが,もっと鮮明になるでしょう。そして,史料活用も重要です。「日本史探究」では,史料を読み解き,解釈し,解釈したことをグループで議論し,発表するという授業が求められるだろうと思います。

「世界史探究」は,史料といっても難しいので,年表や地図,あるいは二次史料,歴史家の解釈のようなものを使って考えさせてみることが求められるのではないでしょうか。
「日本史探究」「世界史探究」というからには,本当に探究科目にならなければなりません。教師が一方的に板書したりプリントを配っていたりしたら,探究どころではありません。講義でもよいとは思うのです。教師の中に問いが出され,生徒に共有され,教師がその問いを探究しながら史資料を活用して,こういうことだったと生徒が納得できれば,教師の探究を生徒が追体験して学習できるわけです。


これからの教科書のすがた

「歴史総合」の教科書はどうなるのかというと,おそらくゆとりのある出版社は2種類つくるのではないかと思います。一つはできるだけ新指導要領の主旨を活かした,生徒のアクティビティや学習課題を重視したものです。もう一つは,無難なところで,できるだけ今の「世界史A」「日本史A」のような通史的に近現代史を教えられるようなものです。

後者の教科書であっても史資料は増えてくると考えられます。ただし,あくまで本文が主役で史資料は脇役です。本文がどうしてこういう解釈になるのか,その根拠となる資料がこれで,といった形です。もちろん先生の使い方次第で,資料を読み解き,生徒と一緒に考えて,実際どうだったのかなと歴史の解釈をして,という授業も可能になるでしょう。


今できること

では,今できることは何かというと,古い上着を脱ぎ捨てることではないかと思っています。ときに今のやり方を疑ってみることも必要ではないでしょうか。

・歴史は古い方から新しい方に向かって教えるのか?
……21世紀に生きる子どもたちに,何千年,何万年も前から教える必要が本当にあるのでしょうか。

・歴史は時代が途切れることなく系統的に教えるのか?
……現在でも2000年を100数時間に圧縮して教えているのです。途切れないと思い込ませているだけで,その時点ですでに途切れ途切れになっています。途切れて何が悪いのでしょうか。

・歴史は政治・経済・社会・文化を総合的に教えるのか?
……総合的に教えるよりも,教師が教えたいことを教えた方が生徒の心には残ると思います。一点豪華主義の何がいけないのでしょうか。

・歴史は生徒がわかるように噛みくだいて教えるのか?
……歴史にはわからないことがたくさんあり,わかったつもりになっているだけです。すべてわからせようというのは無理で,わからないことはいっぱいあっても,それでいいのではないかと思います。

今までの古い考え方にとらわれず,ときには着心地のよい古い上着を脱いで,新しい上着を着ようとしてみることも重要だと思います。


歴史を学ぶ意義

生徒にとって歴史を学ぶ意義があるとしたら,まずは事実に基づき根拠をもって意見をいう能力を育めることがあげられます。歴史に限らず社会学では,限られた手がかりから事実や真相に迫ることが求められます。また,歴史を学べば生徒は相対的な視点を持つことができます。今が絶対だと思いがちですが,過去や他の国について学ぶことで,今を相対化することができるのです。そうすることで,歴史認識をめぐる他国との対立にも冷静に対応できるようになります。
21世紀を生きる子どもたちが,よりよい社会を築いていく賢い市民になるために,歴史を教える教師として何ができるのかを,一緒に考えていきましょう。


研究会の感想
ラーンズ企画制作部 地歴公民編集課より
「『歴史総合』が必修科目となること……これは世界史の敗北を認めなければならない」「世界史は日本史と地理に負けたのである」という,ショッキング(!?)なお話しからのスタートに,まず驚きました。そして,新科目となる「歴史総合」についての見通し,求められる力など,高校現場をよくご存じの先生だからこそのご提言をたくさんいただくことができました。ご講演後の質疑応答は1時間にも及び,活発な意見交換がなされました。
新課程で登場する「歴史総合」・・・従来のやり方にとらわれていては太刀打ちできないと強く感じました。私たちも古い上着を脱ぎ棄てる勇気をもって,今後の教材作成にとりくんでいきたいと思います。原田先生,ありがとうございました。

※先生方のプロフィールは研究会当時のものです。


2017年12月22日 公開



ページトップへ
SSL GMOグローバルサインのサイトシール ラーンズのサイトでは、個人情報の入力をお願いするページは全てSSLセキュアページで保護しております。
ISO27001
IS538539 / ISO 27001:2013
ラーンズではISMSの国際標準規格「ISO27001」を取得。情報資産を適切、安全に保護するため、情報セキュリティ向上に努めております。
えるぼし認定企業
ラーンズでは、えるぼし3段階を取得。女性の活躍推進法に基づき、取り組みの優良企業として厚生労働大臣の認定を受けています。